IBMは、年次カンファレンスThink 2024において、生成AIプラットフォーム「Watsonx」の最新アップデートを発表しました。今回のアップデートでは、オープンソース化、AIアシスタント機能の拡充、GPUサポートの強化など、企業向けAIの強化に重点が置かれています。
オープンソース化でAIモデルの利活用を促進
IBMは、Watsonx上で動作するAIモデル「Granite」をオープンソース化しました。これにより、企業はGraniteを自由に利用し、自社の商用アプリケーションを強化することができます。
Graniteは、116種類のプログラミング言語に対応した強力なコーディングモデルファミリーです。バグ修正、コード生成、リポジトリ保守など、開発業務を効率化する機能が搭載されています。
オープンソース化により、企業はGraniteを改変して独自機能を追加したり、他のオープンソースソフトウェアと組み合わせたりすることが可能になります。これは、企業におけるAIの利活用を促進し、AI開発のイノベーションを加速させることが期待されます。
AIアシスタント機能で開発者とメインフレーム業務を支援
Watsonxには、開発者とメインフレーム業務を支援するAIアシスタント機能が新たに追加されました。
- Watsonx Code Assistant for Enterprise Java Applications: エンタープライズJavaアプリケーション向けのアシスタント。コード品質の向上、自動修正タスクの実行などにより、開発者の作業負荷を軽減します。
- Watsonx Code Assistant for Z: メインフレームアプリケーション向けのアシスタント。COBOLなどのメインフレーム言語に特化した機能を提供し、メインフレーム開発の効率化を支援します。
これらのアシスタント機能は、AI技術を活用して開発者やメインフレームオペレーターの業務を自動化することで、生産性向上と作業負荷軽減を実現します。
GPUサポート強化で処理能力を向上
Watsonxは、NvidiaのL40SおよびL4 Tensor Core GPUに対応したGPUサポートを拡張しました。これにより、Watsonxユーザーは、より強力なハードウェアでAI処理を実行することができるようになります。
大規模なAIモデルの処理や、複雑なAIタスクの実行において、GPUサポートの強化は処理能力の大幅な向上につながります。これは、AI開発の高度化や、AIソリューションの複雑化に対応するものです。
サードパーティ製モデルの拡充で選択肢を拡大
Watsonxには、MetaのLlama 3や、アラビア語にフォーカスしたモデルであるALLaM、Mistral AIのLarge modelなど、さらに多くのサードパーティ製モデルが追加されました。
ユーザーは、これらのモデルの中から、アプリケーションに最適なモデルを選択することができます。モデルの選択肢が増えることで、ユーザーはより精度の高いAIソリューションを構築することができるようになります。
パートナーシップ拡大でWatsonxの利活用範囲を拡大
IBMは、AWSやアドビとのパートナーシップを拡大し、Watsonxの利活用範囲を拡大しました。
- AWSとのパートナーシップ: IBMのWatsonx.governanceツールがAmazon SageMakerユーザーに提供されます。これにより、SageMakerユーザーは、AIツールのリスクやコンプライアンス上の問題を監視、管理することができます。
- アドビとのパートナーシップ: Red Hat OpenShiftとWatsonxがAdobe Experience Platformに導入されます。これにより、ユーザーはアドビのデザインプラットフォーム上でIBMのAI機能にアクセスできるようになります。
これらのパートナーシップにより、Watsonxはより多くのユーザーに利用されるようになり、企業におけるAI導入がさらに加速することが期待されます。
まとめ
IBMは、Think 2024において、一貫して「企業向け」AIに焦点を当てていることを強調しました。
これは、OpenAIやGoogleのようなAI企業が消費者向けのAIエージェントに注力しているのと対照的です。
IBMは、Watsonxを通じて、企業がAIを活用してビジネス課題を解決し、競争力を強化できるように支援することに注力しています。
今回のアップデートは、この戦略の一環であり、企業におけるAIの利活用を促進し、AI技術の進化を加速させることが期待されます。
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